羊と鋼の森
宮下奈都さんの、羊と鋼の森を読了しました。
ピアノ奥ふかっ!穏やかな読後感に包まれてるんですけど、とにかくその衝撃の大きいこと。ピアノは奥がバカ深え。
私は4歳でピアノをはじめて、13まで続けました。バイエルからブルグミュラーからツェルニーから、一応小学生が弾くような曲は大体弾きましたし、コンサートにも行った。曲を聞いて大体の作曲家はわかる。だもんで、分かりやすく読めるはず!私が知ってる世界だもん~とか思って読み始めました。
そしたら溺れました。私は浅瀬でしか生きてないような人間でしたので、ピアノの深さは私にまだ早すぎました。
そんな浅い私でもかなり面白く読めた、羊と鋼の森。タイトルを見たときは、羊たちの沈黙的なミステリーか?とこれもまた浅い推測をしたんですけど、これはそのままピアノのことでした。なぜならピアノには材料として羊が使われている。らしい。鋼も材料ですね
そして森
これは主人公、外村がピアノに対して抱いてるイメージ。
あまりネタバレしたくないので詳しくかかないけど、主人公は北海道の山で生まれ育ってて、ピアノの調律を初めて目の当たりにしたとき真っ先に森を思い出す。そして、調律師になるって決めるんですよ。これ良くね?森に囲まれて育った外村が、森を感じさせるピアノを仕事に選ぶって。いわばピアノは外村にとって帰る場所な?エモいっ!
私もそんな、人生をかけちゃうような衝撃がほしい。主人公がひょんなことからピアノに出会うまで特に何も目指すものがなかったのもいいですね。羨ましい。私も超受動的な運命の出会いをしたい。
このお話、ピアノの奥深さを知るだけじゃありません。主人公の成長物語ともいえます。
調律の世界まっしぐらに進んでいく主人公ですが、音楽のことに関しては全く知識も教養もない。そのことに大きくコンプレックスを抱えてるんですが、「目指すところも状態も分からないが調律をしたい」って姿勢で、ひたすら調律を続けるんですよ。
なんか、大きな事件があって考えが180度変わったり、大きい壁にぶちあたって絶望の縁にいたけどある日目が覚めて立ち直ったり…みたいな安っぽいドラマはない。
想像できる範囲の壁にちょいちょいぶつかって、焦ったり落ち込んだりしながらも、コツコツ努力を続ける。
当たり前のようだけど、これがすごい。
主人公は一見ただの青年なんだけど、読めば読むほど彼の努力はめちゃめちゃ尊敬できると思います。
肝心の、ピアノの奥の深さ、これは本当に読まないと伝わらない。私の言葉じゃ無理
ピアノを文章で表現するって難しいんじゃと思ってたけど、読んでみると納得の連続。読んでいるだけなのになんとなくどんな音色のことを言っているかわかって、音が聞こえてくるみたい。音を読む。初めての経験でしたし、心に残る本になりました。
映像化もされてるみたいなので、そちらも近々楽しみたい。